育休から復帰した社員が孤立する瞬間。経営者が知っておきたい組織づくりの視点

「制度は整えたのに、復帰した社員がどこか働きづらそう。」

そんな違和感を抱いたことはないでしょうか。

育児休業からの復帰は、制度上は「元の職場へ戻る」だけのように見えます。

しかし実際には、本人にとっては働き方も生活も大きく変わる節目です。

両立支援の専門家として企業をご支援してきた経験と、自身も産休・育休を経験した立場から感じるのは、社員が孤立する原因は、制度そのものではなく、組織のコミュニケーションにあることが多いということです。

そして、この問題は社員個人の問題ではなく、経営者が向き合うべき組織マネジメントの課題でもあります。

「戻ってきてくれてよかった」で終わってしまう

復帰初日、多くの職場では歓迎の言葉がかけられます。

もちろん、その一言はとても大切です。

しかし、その後の業務説明や引き継ぎ状況の共有が十分でないまま日常業務に戻されると、本人は

「歓迎されているはずなのに、何をすればいいか分からない」

という状態になってしまいます。

歓迎の言葉と実務的なフォローは、セットで初めて意味を持ちます。

休業中の変化についていけない

数か月から一年以上の休業期間中、会社ではさまざまな変化が起こっています。

  • 人事異動
  • 新しいシステムやツールの導入
  • 業務フローの変更
  • 新規プロジェクトの開始

復帰した本人は、これらを自分から質問しない限り把握できません。

周囲は「言えば分かるだろう」と思っていても、本人は何を質問すればよいかすら分からないことがあります。

いわゆる「浦島太郎状態」になってしまうのです。

時短勤務への何気ない一言

時短勤務を選択した社員に対して、

「今日は早く帰れていいね。」

「時短だから楽でしょう。」

という何気ない言葉がかけられることがあります。

言った側に悪意はありません。

しかし受け取る側は、

「十分に働けていないと思われているのではないか」

「迷惑をかけていると思われているのではないか」

と感じてしまうことがあります。

悪意のない一言が、孤立感につながることは決して珍しくありません。

「気を遣われすぎる」ことも孤立につながる

反対に、周囲が配慮しすぎるケースもあります。

「負担になるから。」

「子育て中だから。」

そんな理由で重要な仕事を任されなくなると、本人は

「もう期待されていないのかもしれない」

と感じることがあります。

配慮は必要です。

しかし、過度な遠慮は本人の成長機会や仕事へのやりがいを奪ってしまうこともあります。

大切なのは、一方的に決めることではなく、本人と対話しながら仕事を決めていくことです。

制度があっても、機能していない会社は少なくない

両立支援の専門家として企業をご支援する中で感じるのは、

制度そのものが不足している会社よりも、

制度はあるのに使われていない会社の方が多いということです。

例えば、

  • 時短勤務制度
  • フレックスタイム制度
  • 在宅勤務制度

これらが整備されていても、

「実際には利用しづらい。」

「評価が下がりそう。」

という空気があれば、制度は形だけになってしまいます。

制度を整えることと、安心して利用できる組織をつくることは別の課題です。

孤立を防ぐために、復帰前からできること

復帰後の不安は、復帰前の準備で大きく減らすことができます。

例えば、

  • 復帰前に現在の業務や組織の変化を共有する
  • 復帰後の働き方について事前に話し合う
  • 業務の優先順位を一緒に整理する
  • 定期的に相談できる機会を設ける

こうした取り組みだけでも、復帰初日の安心感は大きく変わります。

経営者・管理職が意識したいこと

孤立は、多くの場合、

悪意ではなく、

「良かれと思った配慮」

から生まれます。

だからこそ、

制度を増やすことよりも、

本人と対話する時間をつくることの方が重要な場合もあります。

「困っていることはありませんか。」

「今の働き方で無理はありませんか。」

こうしたシンプルな対話の積み重ねが、安心して働き続けられる職場づくりにつながります。

制度設計は社労士、組織づくりは経営の仕事

産休・育休制度や就業規則の整備、社会保険の手続きなどは、社会保険労務士の専門領域です。

一方で、

制度を現場でどのように運用するのか。

管理職がどのように関わるのか。

社員同士が安心して働ける組織をどうつくるのか。

こうしたテーマは、経営や組織づくりの視点から考える必要があります。

制度があるだけでは、人は定着しません。

制度を活かせる組織づくりがあってこそ、本当の両立支援につながります。

まとめ

育休復帰後の孤立は、制度の不足ではなく、組織運営やコミュニケーションの積み重ねによって生まれることが少なくありません。

だからこそ、制度を整えるだけでなく、

  • 復帰前の準備
  • 管理職の関わり方
  • 周囲とのコミュニケーション
  • 働き続けられる組織づくり

まで含めて考えることが重要です。

当事務所では、制度設計そのものではなく、経営・組織づくりの視点から、社員が安心して働き続けられる職場づくりをご支援しています。

「制度はあるのに、なぜかうまく機能していない。」

そんなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。