管理職に「昇進させる人」を間違えると起きること

組織が成長していくと、いつか必ず訪れるのが「誰を管理職にするか」という判断です。

この判断は、人事の問題ではありません。

経営判断です。

一人の昇進が、その後の組織文化や社員のモチベーション、生産性、さらには離職率にまで影響することも珍しくありません。

だからこそ、「優秀だから」「長く勤めているから」という理由だけで決めてしまうと、後から大きな歪みが生じることがあります。

私自身、ゼロから30名規模の組織づくりに携わってきた経験の中で、多くの組織を見てきました。

そこで感じるのは、管理職の選び方一つで会社の成長スピードは大きく変わるということです。

なぜ、この判断は難しいのか

管理職への昇進は、日々の業務に追われる中で後回しにされやすいテーマです。

「そろそろ誰かを上げないと現場が回らない。」

「他に候補がいない。」

そんな理由で決断することも少なくありません。

しかし、管理職は単なる役職ではなく、経営者の考え方を現場へ伝える存在です。

一度昇進させると、本人のキャリアだけでなく、チーム全体の雰囲気や働き方にも影響します。

だからこそ、忙しいときほど立ち止まり、「本当に今、この人なのか」を考えることが大切です。

よくある昇進基準の間違い

プレイヤーとして優秀だから昇進させる

最も多いのが、このケースです。

営業成績が良い。

仕事が速い。

専門知識が豊富。

もちろん素晴らしい能力ですが、それはプレイヤーとしての能力です。

管理職に求められるのは、

  • 人を育てる力
  • 周囲を巻き込む力
  • 判断する力
  • 任せる力

です。

自分で仕事をこなす能力と、人を通じて成果を出す能力はまったく別のものです。

優秀なプレイヤーほど、自分でやった方が早いと考え、仕事を抱え込んでしまうこともあります。

勤続年数だけで決める

「そろそろ年次的に。」

この理由で昇進するケースも少なくありません。

しかし、本人がマネジメントを望んでいなければ、役職は負担になります。

管理職になることが本人にとって幸せとは限りません。

役割への納得感がないまま昇進すると、本人も苦しくなり、チームも機能しなくなってしまいます。

他に候補がいないから決める

組織が小さいほど、この判断は起こりがちです。

しかし、「消去法」で選ばれた管理職は、経営者自身も不安を抱えたまま任せることになります。

その不安は、本人にも伝わります。

結果として、

「任せきれない」

「結局社長が全部判断する」

という状態になり、本来の管理職としての役割を果たせなくなってしまいます。

昇進後によく起きる問題

管理職になった後、次のような課題が起こることがあります。

  • プレイヤー業務を手放せない
  • 部下へのフィードバックを避けてしまう
  • 昇進前の人間関係を引きずり、注意や指導ができない
  • 権限だけを与えられ、育成を受けていない
  • 経営者の意向をそのまま伝えるだけになってしまう

これらは本人の能力不足ではありません。

多くの場合、昇進前に確認すべきポイントを十分に見極めていなかったことが原因です。

昇進前に見ておきたいポイント

他者の成長を喜べる人か

管理職は、自分が成果を出すことよりも、チーム全体で成果を出すことが仕事になります。

普段から後輩の成長を喜んでいるか。

教えることを苦にしていないか。

日常の様子から見えてくることは少なくありません。

厳しいことも冷静に伝えられるか

管理職には、耳の痛い話を伝える場面があります。

感情的に叱るのではなく、

事実を整理し、

改善策を一緒に考えられる人かどうか。

これは非常に重要な資質です。

任せることができるか

優秀な人ほど、自分でやった方が早いと思いがちです。

しかし管理職は、

「自分がやること」

ではなく、

「人に任せること」

が仕事になります。

後輩へ仕事を任せたり、相談しながら進めたりする姿勢は、昇進前から見えているものです。

会社の価値観を体現しているか

管理職は、会社の理念や方針を現場へ伝える役割も担います。

業務能力だけではなく、

会社が大切にしている価値観を日頃から体現できているか。

これも重要な判断材料になります。

経営者に率直な意見を伝えられるか

管理職は、経営者の「イエスマン」ではありません。

現場で起きていることを正しく伝え、必要であれば異なる意見も言える存在であることが理想です。

健全な組織には、健全な意見交換があります。

昇進後こそフォローが必要

昇進した瞬間から管理職になれる人はいません。

役割が変われば、悩みも変わります。

だからこそ、昇進後のサポートが重要です。

例えば、

  • 昇進後1〜3か月は定期的な1on1を行う
  • マネジメントで困っていることを確認する
  • プレイヤー業務を減らすための支援を行う
  • 管理職同士が相談できる場をつくる

こうした取り組みが、新しい管理職の成長を支えます。

「昇進させない」という判断もある

組織の状況によっては、

「まだ昇進させない」

という判断が最善であることもあります。

役職を与えることだけが評価ではありません。

裁量を広げる。

新しい仕事を任せる。

プロジェクトリーダーを経験してもらう。

こうした方法で成長を促すこともできます。

焦って役職を与えるよりも、その人が力を発揮できるタイミングを見極めることが、結果として本人と会社の双方にとって良い選択になることも少なくありません。

まとめ

管理職への昇進は、人事上のイベントではなく、組織の未来を左右する経営判断です。

「誰を昇進させるか」だけでなく、

  • いつ昇進させるのか
  • 何を期待するのか
  • どのように育成するのか
  • あえて昇進させないという選択をするのか

まで含めて考えることで、組織はより持続的に成長していきます。

当事務所では、管理職の選任や評価制度を単なる人事制度としてではなく、経営戦略を実現するための組織づくりという視点からご支援しています。

「管理職を任せたい人はいるが、本当にこの判断で良いのか迷っている。」

そんな段階からでも、お気軽にご相談ください。